歯周病専門医

歯周病専門医が解説する、歯石とは?

投稿日:2022年3月3日 | 最終更新日:2024年2月3日

歯周病専門医が解説する、歯石とは?

お口の中で歯の周りにつく石のようなものです。プラーク(細菌の塊)が唾液の中のカルシウムやリンなどのミネラル成分と結びついて石のように固くなったものを歯石と言います。
プラークのうちは自分の歯磨きで取り除くことができますが、歯石になると歯医者で使う超音波スケーラー(超音波で歯石を砕く器具)で取り除く必要がります。

1-1.歯石はなぜ取らないといけないのか

歯石自体は石なので悪いものではありません。歯石は軽石のように小さな穴が空ていて、そこを住みかに細菌が繁殖し、毒素を出します。その毒素が歯茎を腫らしたり、歯の周りの骨を溶かす歯周病の原因になります。歯石の中の細菌は歯磨きなどでは取れないので、歯石ごと細菌を取る必要があります。
そして歯周病は糖尿病、心臓病、脳卒中、慢性腎疾患、肺炎、骨粗しょう症、癌および早産などの合併症を伴うことがあります。そのため歯石を取り除き、歯周病を改善することはとても重要なことであります。

下の前歯の裏側に歯石が付いている状態

 

歯石を取り終わった後の状態

 

1-2.なぜすぐにプラークが歯石になってしまうのか

歯は食事をする度に表面のミネラル成分であるカルシウムやリンが溶け出して(脱灰・だっかい)しまいますが、唾液の中にあるミネラル成分によって元に戻ります(再石灰化・さいせっかいか)。
このように唾液の中には歯が虫歯にならないように、大量のミネラル成分が含まれています。だから、プラークが残っていると48時間で歯石になってしまうのです。

2.歯石はいつ取ればいいのか、方法、費用

2-1.3ヶ月に1度定期検診時におすすめの方

歯周病の進行程度が初期の方で、ブラシの状態もいい方は3ヶ月に1度でいいです。短い期間で定期的に歯石を取っている方は歯石も柔らかく、1回で全ての歯石を取り除くことができます。

方法:歯石は超音波の振動を与えながら歯石を粉砕して除去して行きます。特に歯茎の上の柔らかい歯石は比較的簡単に取れます。

2ー2.毎月歯石を取った方がいい方

歯周病の進行が中等度から重度の方で、歯周ポケットが4mm以上の部分がある方は毎月歯石を取ることをお勧めします。歯周ポケットが4mm以上の部分は、ご自身では歯周ポケット内の細菌を取り除くことができなくなります。毎月歯周ポケット内の細菌の活動を抑えることで歯周病の進行を押さえることができます。

方法:歯周ポケット内に超音波の振動を与えることで歯周ポケット内の細菌を洗浄します。

2−3.毎週歯石を取ることをおすすめの方

1年以上歯医者で歯石を取ったことがない方は数回に分けて歯石を取り除く必要があります。特に歯茎の中にこびりついた歯石は簡単には取れなくなっています。2〜6回程度に分けて徹底的に歯石を取り除く必要があります。歯石を取り終わった後は、1〜3ヶ月で歯石を取っていきます。

方法:長期間放置していた歯石は歯にこびり付いています。特に歯周ポケット内の歯石は血液と結びついて強固になっています。超音波の振動や歯石を取る細い器具を使って取って行きます。この時、歯茎が腫れていたり、出血があると取り残しが増えるため、出血が無い歯茎の状態にしてから、歯石を取る必要があります。歯周病ポケットの深さは4mmまではこのディープスケーリングで対応します。それ以上になると器具が届かないため、外科的な処置が必要になります。

3.赤ちゃんの歯石は取った方がいいのか

赤ちゃんの下の前歯の裏に歯石が付くことがあります。この歯石は無理して取る必要はありません。赤ちゃんのお口の中には歯周病菌がいないので、歯石ごと磨いて、あげればいいのです。もちろん、赤ちゃんが協力的で取れるようであれば取ってあげてもいいのでしょう。

4.歯石除去後に起こること

4-1.知覚過敏で歯がしみる

歯茎の中の歯石除去や、外科的に歯石を取ると急に歯茎が引き締まり歯がしみるようになります。これは歯に歯石が付いていたことによって歯周病が進行し、歯の周りの骨が溶けてしまったことが原因です。歯石を取る前は歯石や汚れで根の周りが覆われていましたが、歯石を取ることによってお口の中に直接、歯の根の部分が露出してしまうため、知覚過敏になります。

・対処方法

知覚過敏を起こした歯にはプラークを付けないように丁寧に歯を磨くと唾液中のミネラルが歯の表面を固くしていきます。また、フッ素塗布や知覚過敏用の歯磨き粉を使うと早くシミが止まります。どうしてもシミが取れなくて、痛みが続く場合は神経を取る処置をすることもあります。

4-2.歯茎が引き締まって歯茎下がりが起こる

深い場所にある歯石を取ると歯茎が引き締まり、下がったように見えます。歯石によって歯の周りの歯茎が腫れたり、骨の周りの骨が溶けてしまっていたので、歯石を取ることによって腫れていた歯茎が引き締まり、歯茎が下がります。

・対処方法

この状態が正常な状態です。この状態を維持するように今後は歯石を溜めないようにします。また、極端に歯茎が下がってしまった部分が気になるようであれば歯茎を移植する方法もあります。

4-3.重度の歯周病の方は歯が揺れる

歯周病が重度の方は歯石を取ると歯が揺れてくることがあります。これは歯に歯石が大量につくことによって、歯石で歯がつながっていたため、歯石を取ることによって一時的に歯周ポケットが開いてしまうことで起こります。

・対処方法

2週間ほど経っても揺れが止まらないようであれが、歯科用の接着剤で固定します。また、被せものを繋げることによって揺れを止める場合もあります。

5.歯石の付きやすい場所

5-1.下の歯の前歯の裏

下の歯の前歯の裏には舌下腺という唾液を作る器官の出口があります。前歯の裏にプラークがあると唾液の成分で直ぐに歯石になってしまうので、歯石が付きやすくなります。その代わりその成分のおかげで歯が溶けても、直ぐに石灰化するので、虫歯にはなりにくい場所です。

5-2.上の歯の奥歯の頬側

上の歯の奥歯の頬側には耳下腺という唾液を作る器官の出口があります。そこにプラークが残ると直ぐに唾液の成分で歯石になってしまいます。

5-3.出血がある歯周ポケットの中

歯石の成分の一つは血液です。歯茎から出血がある方や、歯周ポケット内に出血がある方は血液と唾液とプラークが結びついて歯石になります。この歯石は特に歯周病を悪化させる細菌の住みかを作ります。

5-4.噛んでいない歯の表面

歯は噛むことや食べ物が擦れることによって、汚れやプラークが落ちる部分もあります。噛む相手がいない歯や機能してない歯は、歯の表面に歯石が付きやすくなります。

6.歯石の予防

6-1.毎日プラークをしっかり落とす

歯石は唾液、プラーク、血液から出来ています。唾液は体や歯に取って欠かせないものです。しかし、プラークは歯磨きとデンタルフロスを正しい使い方で行えば防ぐことができます。プラークは24時間で作られ、48時間で歯石になります。毎日プラークを残さないブラッシングをマスターすることが歯石予防の方法です。詳しくは「デンタルフロスで虫歯や歯周病を防ぐ方法」を参考にしてください。

6-2.出血のない歯茎を保つ

歯周病で歯茎や歯周ポケット内に出血があるとそれが歯石になっていきます。歯周ポケット内の出血は自分では気づきにくいもので、この出血が歯周病菌の活発度合いも示しています。出血のない健康的な歯茎を維持することで、歯石を予防できます。

6-3.歯の表面をツルツルにする

歯の表面に傷があったり、ざらざらしていると歯石が付きやすくなります。研磨剤の粒が大きな歯磨き粉など使うと歯石が付きやすくなります。お勧めの商品は美白用歯磨き粉のライオンブリリアント・モアなど、歯の表面をツルツルさせる効果のものが有効です。また、歯医者で歯石除去後にリナメルトリートメントを行い歯の表面の傷を修復させると歯石が付きにくくなります。

6-4.きれいな歯並びは歯石も防ぐ

歯石が付きやすい下顎の前歯は、歯並びが悪くなりやすい場所でもあります。歯周病になると歯が動き、特にこの部分は歯が重なり合う場所でもあります。できることなら部分矯正で前歯の歯並びを治すことで歯石が付きにくくなります。

6−5.電動歯ブラシは歯石を防ぐ効果あり

最新の電動歯ブラシは歯石の原因である歯垢を取り除く効果が高いものがあり、電動歯ブラシをうまく使えば手で磨くより歯垢を効率的に落とすことができます。

7.歯石は口臭の原因となる

歯石は細菌の住みかになっていて、歯周病の原因です。歯周病になると歯茎の腫れ、出血、口臭などが起こります。特に歯茎の中の歯石は歯周病を悪化させ、強い口臭を引き起こします。まずは、歯石をしっかり取り、その後は再度つかないように定期的に除去して歯周病を予防していく必要があります。

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