歯周病専門医

歯周病と口腔内常在菌について

投稿日:2022年3月3日 | 最終更新日:2024年2月3日

口腔内常在菌について

歯周病のイラスト

歯周病の発症は歯周病原菌の感染によって起こります。
口腔内には300~400種類の細菌が存在していますが、その中でとくに歯周病原菌となる特異な最近は、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A.A菌)、プロフィロモナス・ジンジバリス(P.G菌)、プレボテーラ・インテルメディア(P.I菌)、スピロヘータなどがあります。これらの菌が、歯肉溝(歯と歯ぐきの境目)のなかで異常増殖すると歯周ポケットが形成され、付着部が歯面からはがれ、続いて歯肉がはれ、歯槽骨の破壊を起こさせます。

 

口腔内常在菌の特徴

問診

人の口腔内には、腸内と同様に微生物が常在菌として生息しています。口腔に定着している細菌を総称して口腔常在細菌と呼び、口腔内の歯や歯肉、粘膜や舌などの組織、歯と歯肉の境目などに形成する、細菌など微生物の集合体を口内フローラ(口腔内細菌叢)といいます。口腔は外界と接するため、口腔内の常在細菌には人に悪影響を及ぼす微生物の侵入を防ぐ働きがあると考えられています。口腔内の常在細菌はだ液とともに飲み込まれて上気道や消化管へ移動し、口腔内以外の部位でも定着していくメカニズムがあり、全身の健康に影響があることがわかっています

歯周病菌顕微鏡像

口腔内の常在菌

口内常在菌ロイテリ菌、乳酸菌、口内レンサ球菌など
日和見菌肺炎菌、ブドウ球菌、大腸菌など
通常は無害だが、増殖すると悪玉化する。
悪玉菌虫歯菌(ミュータンスレンサ球菌など)
歯周病菌(プロフィロモナス・ジンジバーリス、トレポネーマ・デンティコーラ、タンネレラ・フォーサイセンシスなど)

口腔常在細菌は750菌種ほどの菌種が知られていますが、人それぞれが固有のバランスをもって生息しています。

口腔常在細菌の中には虫歯や歯周病などの口腔疾患の原因となるものもありますが、健康な人の場合は適切な口腔ケアによって、口内フローラは良好に保つことができます。しかし日常は問題とならない細菌であっても、体力や免疫力が低下した場合には日和見感染をおこすことがあります。

アクチノマイセス(アクチノミセス)

細菌の仲間で口腔常在細菌の主な構成菌です。アクチノマイセス属の細菌は30種以上ありますが、口腔内に存在する主なものは12種類です。歯みがきをしてきれいになった歯の表面に最初に付着する初期付着細菌として注目されていて、歯垢(プラーク)の10~20%を占め、虫歯や歯肉炎の原因にもなるといわれています。しかし一方で、歯周病のない健康な人の口腔内にも多く存在し、歯周病がある人の口腔内では減少することから、口腔内の健康状態をみる目安にもなるのではないかと考えられています。

レンサ球菌群

レンサ球菌はその溶結性により大きく3群に分けられ、さらに細かくグループ分けされています。その中には疾患の原因となるものもありますが、口腔内に常在する菌種はほぼ決まった数種類であり、ほとんど病原性はなく正常な口内フローラを形成します。

レンサ球菌群のうち、ミュータンスレンサ球菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)は歯の表面に生息し、酸性の条件下ではむし歯の原因菌となることがわかっています。

砂糖が含まれている食品を食べると、ショ糖を原料として菌が産生する酵素から粘着性のある多糖類を作ります。この多糖類はグルカンといい、歯の表面で他の細菌とともに塊を形成します。これがプラークと呼ばれるむし歯の原因となるものです。

歯周病 佐世保
Streptococcus salivarius:
舌表面の最優勢菌種
Streptococcus mitis:
連鎖球菌 頬粘膜および歯牙表面
Streptococcus sanguinis:
歯牙表面に生息する口腔レンサ球菌で齲蝕病原性はないとされている。
Streptococcus mitior:
口腔レンサ球菌で齲蝕病原性はないとされている。
Streptococcus mutans:
歯牙表面に主に生息するが検出頻度は低い。しかし、齲蝕病巣からは確実に分離される。菌体外グルカンや乳酸の産生、酸性条件下での増殖能などから齲蝕の原因菌とされている。
Porphyromonas gingivalis:
グラム陰性の嫌気性細菌で、歯肉溝に生息し、歯周病の原因菌として注目されている。
Bacterionema matruchotii:
バクテリオネーマ‐マトルコティ歯垢に生息する線維状または多形態性のグラム陽性桿菌である。
Propionbacterium acnes:
嫌気性無芽胞グラム陽性菌で、糖を発酵してプロピオン酸と酢酸を産生する。主に皮膚と腸管に生息している。

口内フローラが関係する口腔トラブル

歯周病

むし歯や歯周病といった誰でもかかる可能性がある歯科疾患も、実は細菌によって引きおこされています。口内フローラを良好なバランスで保つことは、口腔トラブルの予防に有効です。

むし歯

ミュータンスレンサ球菌が歯に付着し、ショ糖を栄養にしてグルカンを作ります。グルカンに包まれた細菌の塊は、プラークとなって歯の表面に付着し乳酸を作り出します。乳酸によってプラークの中が酸性に傾くと、プラークに接している歯の表面のエナメル質は溶けてしまいます。この現象を脱灰と呼び、脱灰の状態が続くことで歯に穴が開いて虫歯ができます。歯に穴が開いた状態でもすぐに痛みは感じません。歯の内部にむし歯が進行し、歯髄という歯の神経や血管のある部分にまで細菌が侵入すると強い痛みが出ます。さらに細菌が奥に侵入して顎の骨の中に細菌の巣を作るようになると、顔が腫れあがったり発熱やその他の全身に悪影響が及ぶことがあります。

歯に穴が開く前の初期の状態であれば、歯は再石灰化といってミネラル成分を取り込んで、回復することができます。健康な人の口腔内では、脱灰と再石灰化が繰り返されています。

お菓子メーカーLOTTEのウェブサイト中で、虫歯のリスクについてわかりやすく紹介されています。ご参考ください。
https://www.lotte.co.jp/products/brand/xylitol/scene/index.html

歯周病

歯周病は歯を支える歯肉や骨(歯槽骨)などの組織が壊れていく病気です。厚労省の調査では、40歳以上の日本人は約8割以上の人が歯周病であるという調査結果も出ています。

歯周病の原因は虫歯の原因と同じくプラークです。プラークの中で増殖した歯周病菌が産生する毒素が歯肉の腫れや出血をおこし、進行すると歯槽骨を破壊して歯を失う原因となります。

歯周病になりやすい因子はいくつかあり、それらが重複するほどリスクが高まると考えられます。

・微生物因子:口内フローラのバランスと歯周病菌の存在。
・環境因子:適切な口腔ケアの習慣と定期的歯科検診の有無、食習慣、喫煙、ストレスなどの生活環境。
・宿主因子:年齢、疾患の有無、遺伝的要素、免疫力の低下など。
・咬合因子:噛み合わせやそれまでの歯科治療の状態、義歯使用の有無など。

これらの因子の中には、自分ではコントロールが難しいものも含まれますが、環境因子には自分でコントロールできるものが多く、歯周病のリスクを減少するために重要です。

口臭

口臭の原因の多くは口腔内にあり、口内フローラが大きく関係しているといわれます。口腔常在細菌が食べ物の残りかすや新陳代謝ではがれ落ちた粘膜など、口腔内のたんぱく質を分解することが口臭の主な原因のひとつです。においの強さは口腔常在細菌の種類やバランス、口腔内の汚れやだ液の分泌量などによっても異なります。

歯周病のバイオフィルムとの感染

バイオフィルム

健康な歯肉溝では、バイオフィルムの75%が常在菌(グラム陽性好気性球桿菌)であり、歯周病の病原性はありません。成人型歯周炎の歯周ポケットでは、グラム陰性嫌気性球桿菌が75%を占めています。健康な歯肉溝と歯周病の歯周ポケットとのバイオフィルムには大きな違いがあります。歯周病に罹患した歯周組織を健康な組織にする為には、嫌気性菌、グラム陰性菌、スピロヘータの数を減らさなければなりません。

歯周病原因細菌分布

家族に感染する可能性

歯周病は、細菌(A.A菌、P.G菌など)が外部から侵入して口腔内で増殖することによって感染し、発症します。そのため、夫婦間・親子間で感染、伝染する可能性があることから家族全体を対象として治療を行う必要性があります。

口内フローラが全身に与える影響

歯周病によってリスクが高まる全身疾患を、日本歯周病学会ではペリオドンタル・シンドローム(歯周病関連全身疾患症候群)と呼びます。口内フローラのバランスが崩れることで歯周病菌などの悪玉菌が増殖すると、全身に悪影響が及ぶことがあります。

誤嚥性肺炎

口腔内の清潔が保たれないと、プラークが増えて口内フローラのバランスが崩れます。歯周病菌などの有害な微生物が増殖し、だ液とともにそれらを飲み込むことで気管や気管支の粘膜、肺で炎症を引きおこすことがあります。嚥下機能の低下した高齢者などでリスクが高く、重症化すると命にかかわることもある重大な疾患です。

脳卒中・心筋梗塞

口腔内の歯周病菌が歯肉から血管内に侵入し、血管の内壁でアテローム性プラークの形成に関与していると考えられています。このアテローム性プラークの蓄積によって血管が狭くなったり、血管を傷つけたり、大きくなったプラークが破裂したりすることで、脳卒中や心筋梗塞などがおこる可能性があります。

認知症

国内外で歯周病菌が認知機能へ与える影響について、さまざまな研究が行われています。アメリカの大学の研究チームによって、慢性歯周病の原因菌がアルツハイマー型認知症患者の脳内で確認されたという研究結果が発表され、歯周病と認知機能の関係について解明が進んでいます。

糖尿病

進行した歯周病がある場合、炎症によって生じた物質(CRP)やサイトカイン(主に免疫細胞から分泌されるたんぱく質)が血液中に入り、全身をめぐります。CRPは肝機能の低下やブドウ糖の代謝障害を引きおこし、サイトカインは筋肉細胞や脂肪細胞に作用して糖代謝を妨げる働きをします。そのためインスリンの作用が低下して、糖尿病が悪化することがあります。

早産・低体重児出産

歯周病菌や歯肉の炎症などによって産生された物質が血液中に入ると、血液中のプロスタグランジン(体内で作られるホルモンに似た働きをする生理活性物質)などが子宮の収縮を早めるため、早産や低体重児出産のリスクが高まるといわれます。

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