全身疾患の関連について
歯周病は、歯ぐきや歯を支える骨など、お口の中だけの病気ではありません。全身の健康にも大きく影響を及ぼすことが分かっています。菌が血液を介して全身に運ばれることによって、様々な病気を引き起こすのです。
狭心症・心筋梗塞
血管を詰まらせる原因となる「血栓」と菌に関係があることが知られています。血栓によって血管が詰まることで、狭心症や心筋梗塞などの心疾患を引き起こします。
歯周病の人は1.15~1.24倍リスクがあがります。脳梗塞
血栓によって脳の血管が詰まることにより、脳梗塞を起こすリスクが高まります。罹患した方はそうでない人にくらべて2.8倍も脳梗塞リスクが高いといわれています。
肺炎
誤嚥(ごえん)によって菌が気管に入り込んで肺にまで到達すると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。とくに高齢の方は注意が必要です。
動脈硬化
おかゆ状の沈着物が血管内に溜まり血管を狭めることで動脈硬化を引き起こすといわれています。この沈着物内に菌が検出されたという報告があります。
肥満
生活習慣病のひとつであり、肥満とも深い関係があります。肥満の方のリスクが高まったりします。
糖尿病
糖尿病とは、お互いの病状を悪化させる関係であることが指摘されています。その原因としては、インスリンの働きが低下することによるといわれています。
骨粗鬆症
骨粗鬆症になると歯を支える歯槽骨という骨ももろくなってしまいます。このため、病状の悪化リスクが高まります。
低体重児出産・早産
妊娠している女性が罹患すると、陣痛を促す物質が分泌されることにより、早産や低体重児出産のリスクが高まることもあります。
「アルツハイマー病」の進行を促進!?
認知症の中で最も多い、アルツハイマー型認知症。脳の委縮が特徴のアルツハイマー病によって起こる認知症のことで、症状はもの忘れなどの記憶障害や判断力の低下などです。 治療が、アルツハイマー病の進行を遅らせる可能性が指摘されました。
歯周病との因果関係については、まだわかっていないものの、動物実験の結果は、アルツハイマー病の悪化因子であることを示唆しています。人工的にアルツハイマー病にしたマウスの半数に歯周病を発症させたところ、健康なマウスよりも認知機能が悪化。実験後に、脳に沈着したアルツハイマー病の原因とされるたんぱく質を調べると、健康なマウスに比べて、歯周病マウスのものは重量で約1.5倍、面積では約2.5倍にもなっていました。研究者は、口の中の菌や炎症のもととなる物質などが、血流に乗って脳に運ばれて何らかの影響を与えているのではないかと考察しています。
アルツハイマー病を悪化させる要素ならば、治療はアルツハイマー病の進行を遅らせる有効な手段になり得るかもしれません。

歯を失うことも、アルツハイマー病に打撃
歯を失うことも、アルツハイマー病と無関係ではありません。アルツハイマー型認知症の発症には脳の中の神経伝達物質の減少が関わっていると考えられており、神経伝達物質は噛むことによる刺激が脳に伝わることで増えるからです。また、噛むことが脳を活性化することもわかっています。つまり、歯を失うことが、アルツハイマー型認知症の引き金にもなりかねないということなのです。アルツハイマー型認知症の人は健康な人よりも歯の本数が少なく、また、残っている歯が少ないほど脳の委縮が進んでいたということが報告されています。